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あれから、課長と私は付き合い始めて、今日は初めて課長の家へと泊まりに来た。
チャイムを鳴らせば足音がしてドアが開く。
彼の私服姿もカッコ良くて頬が染まった私に、彼は照れくさそうに微笑んで銀縁眼鏡を指で押し上げた。
「……隆志さん、家に居る時は眼鏡しないっていってませんでした?」
「んー?あぁ、そうなんだけど……」
彼は苦笑を洩らしつつ私をソファに座らせて、ローテーブルにコーヒーを置いた。
そして、こほんと咳払いをして不自然に話をそらす。
「雫、2人の時は敬語はつかってくれるなと言ってるだろ」
「あー……うん、そうだった。頑張って治す」
「ははっ、可愛い」
隣に座りソファの背もたれに載せた手が頭を撫でた。
一緒に借りてきた映画のDVDを見て、一緒にご飯を作って食べて、一緒に片付けて。
それからまた一緒にソファに座った所で彼は私をじっと見た。
「雫、質問の答え、教えようか」
「質問の答え?」
彼はすっと眼鏡をはずし私を見つめた。
「コレがないと、制御出来ない」
「っ、」
「壁を取っ払うと、雫への気持ちが抑えられねーよ」
彼はそう言うと私をぎゅっと抱きしめた。
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