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「信じられないな。フロアの男どもは……」
課長は独り言のように呟いて、それから口をつぐんだ。
課長にじっと見つめられて、私はどうしたいいものかと料理をつまむ。
……あ、このタパス美味しい。
「アイツ等はともかく、俺も狙っていたんだ」
「ん?あ、コレ美味しいですよ。大丈夫です、全部食べたりしませんから」
お皿を少し課長の方へ押すようにしたら、手を掴まれてしまった。
「お前は鈍感なんだな?」
「……え?私ですか?」
「やたら男に話しかけられてるだろ」
「……あぁ、仕事の事ならそうですね。班長という立場ですし」
「デートに誘われたりしないのか?」
「……ですから、そんな人はいないんです。虚しくなるのでもうつっこまないでください」
「じゃあ、俺が誘ってもいいか?」
…………え?
今は眼鏡のない端正な顔がじっと私を見つめた。
「実はずっと雪野を狙ってた」
「……え?え?課長?」
「いつも姿勢が良くて、挨拶もきちんとしてて、頼んだ事は嫌な顔をしないし仕事が早い。人ともそつなく付き合えて、おしみなく笑顔を向ける」
「……えっと、それが普通なんじゃ」
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