六月、梅雨の晴れ間のある日

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光流とゆき乃は緊張した面持ちで姿勢正しく並ぶ。そんな二人をましろは、うっとりと見上げた。 (本当に王子様とお姫様みたい……) 二人の組まれた腕を見る。 (私もいつか誰かのお嫁さんになるのかなぁ) フレアスカートの裾を思わずギュッと掴むとポケットに何か手応えがあった。中に入っているものを取り出す。 「あった!」 手の中のものは、ましろに目的を思い出させた。 「これ、ゆき乃に渡さなきゃ」 ましろはゆき乃の方へと駆けだす。 「あ、ましろちゃんダメだよ」 クロもましろを追って駆けだした。 「あっ!」 そのときクロに手をとられ、ましろは立ち止まった。 「それでは新郎新婦の入場です」 司会の声と共に披露宴会場の両開きの扉が開かれたとき、スポットライトの中にいたのは光流とゆき乃ではなく、学生服のクロと幼いましろだった。 華麗なウエディングソングと大きな拍手が二人を包む。 「はぁっ!?」 拍手喝采の中、クライマックスシーンを奪われ光流は叫んだ。 「あ……」 クロとましろは、手をつないだまま顔を見合わせる。 「お兄ちゃん、どうしよ。私、絶対お母さんに怒られる……うわーん」 「ま、ましろちゃん」 慌てるクロ。 スポットライトの中でましろは泣きじゃくった。 業平の怪。あれから数年経ち、こうしてシロとクロは再会した。
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