1382人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
光流とゆき乃は緊張した面持ちで姿勢正しく並ぶ。そんな二人をましろは、うっとりと見上げた。
(本当に王子様とお姫様みたい……)
二人の組まれた腕を見る。
(私もいつか誰かのお嫁さんになるのかなぁ)
フレアスカートの裾を思わずギュッと掴むとポケットに何か手応えがあった。中に入っているものを取り出す。
「あった!」
手の中のものは、ましろに目的を思い出させた。
「これ、ゆき乃に渡さなきゃ」
ましろはゆき乃の方へと駆けだす。
「あ、ましろちゃんダメだよ」
クロもましろを追って駆けだした。
「あっ!」
そのときクロに手をとられ、ましろは立ち止まった。
「それでは新郎新婦の入場です」
司会の声と共に披露宴会場の両開きの扉が開かれたとき、スポットライトの中にいたのは光流とゆき乃ではなく、学生服のクロと幼いましろだった。
華麗なウエディングソングと大きな拍手が二人を包む。
「はぁっ!?」
拍手喝采の中、クライマックスシーンを奪われ光流は叫んだ。
「あ……」
クロとましろは、手をつないだまま顔を見合わせる。
「お兄ちゃん、どうしよ。私、絶対お母さんに怒られる……うわーん」
「ま、ましろちゃん」
慌てるクロ。
スポットライトの中でましろは泣きじゃくった。
業平の怪。あれから数年経ち、こうしてシロとクロは再会した。
最初のコメントを投稿しよう!