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「やらなきゃ!」
鉛筆を構えて、ましろは算数ドリルを睨む。難しい問題ではない。集中すればあっという間に終わるはずだ。
「よーい、ドン!」
ましろは鉛筆を走らせた。単純な計算式は簡単に終わる。けれど、応用問題で鉛筆が止まった。5人家族でホールケーキを等分に分けるという問題だ。
ましろの家族は大人数だ。敷地内に3世帯と叔母家族、総勢10人が住んでいる。
東京では5人家族は多い方だという。
「うちで買ってるような大きい丸いケーキ買ったら食べきれないじゃん。どうするの?1人分をでっかく切るしかないよね」
今までどんな大きなホールケーキでも余るということを経験したことがないから想像がつかない。
「光流とゆき乃はどうしてるんだろう? 丸いケーキを半分こ? えぇ、羨ましい!」
ケーキのことばかり考えていたら、お腹が空いてきた。
「あーーケーキ食べたいぃ。ケーキ食べたら頑張れる気がするぅ」
床をゴロゴロと身悶えているとノックがされ、返事をする前にドアが開けられた。慌てて起き上がる余裕もない。
「な、何をしてるんだお前は。勉強してるのか?」
「光流! いいよって言う前に開けないでよ」
抗議するましろの頬は恥ずかしさで紅潮している。
「ちゃんとやってるのか、抜き打ちで見にきたんだよ。そしたら案の定、寝てるし」
「寝てない! 身悶えててたの!」
「は?」
光流は呆けて口を開けた。
「ケーキ食べたい。ケーキ食べなきゃこの問題解けない……」
ましろは懇願するように光流を見つめた。
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