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「暑い、暑い、暑いー」
歩く足が汗に濡れて重い。真夏の東京は身体が溶けそうなほどの暑さだ。
光流とゆき乃の結婚式から二年後の夏。
小学三年生になったましろは茨城の常陸太田から浅草に来ていた。照らされたアスファルトの熱はビルに遮られて逃げ場をなくし、こもっている。
けれど、すれ違う日傘の女性やスーツの男性は一言も不満を漏らさず、姿勢正しく歩いている。
「どうしてこんな暑いのに東京の人は涼しい顔してんのー? かっこつけてるのかなぁ」
二年前より背も髪も伸びたけれど、女の子らしさは育たなかったようだ。
ショートパンツにTシャツ、大きなリュックを背負うましろは男の子のように見える。
「あー、マジで暑ちぃ」
そう言った直後、ましろのポニーテールが何者かによってグンと引かれた。
「痛っ!」
勢いよく振り返ると、見覚えある顔がそこにあった。
「お前、小学生でそんなんじゃ将来おなべ確定だな」
そう言って呆れたように笑う藍色の瞳。
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