空飛ぶひよこ

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宿舎に戻ったカーツは早速アラカナの部屋に向かった。 ドアの前に立つと、苦しそうに呼吸を荒げる音が聞こえる。 まさか、疲労で熱にうなされているんじゃあ……。 カーツはドアを慌てて開けた。 「おい、大丈夫かヘミー……!」 そこにいたのは、上半身裸で全身を汗まみれにしトレーニングを積むアラカナだった。 床に敷いたタオルは飽和し、汗の湖をなしていた。 はりに足を掛けて上体を持ち上げ続ける。 「あ、カーツ……」 カーツ気付いたアラカナは足を滑らせ落ちた。 「いっで!」 なかなか起き上がらないアラカナの顔を覗き込む。 「おーい、生きてるか?」 「なんとか……」 「それにしても……」 カーツはアラカナの身体に目を向けた。 無茶苦茶な肉体だった。 体脂肪がほとんどなく、鍛錬に鍛錬を重ね固く絞った雑巾のように締まった筋肉。 まるで岩場だ。 遠心力に負けないよう飛行士は厳しいトレーニングを積むが、ここまで鍛えた男を他に知らない。 「バケモンみてーだ」 出てきた感想はもはや呆れだった。
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