0人が本棚に入れています
本棚に追加
思春期の、まだ大人になり切れていない、心理的に不安定な時期の香澄の言葉は、平井君の胸をどれほど残酷に抉り抜いた事だろう。
その後、バイク仲間も、避ける……とまではいかないが、何となくよそよそしくなったらしい。
傷物に触れる、みたいな、どのように扱ってよいか、持て余しているような態度。そんな素振りに気付かないフリをして、今までと変わらぬ態度で接し続けた平井君。
それがどんなに辛かっただろうか……考えるまでもない。
「頭を上げてくれ、平井君」
平井君の話を全て聞き終わり。俺まで、胸が締め付けられる思いだった。
こんな思いをした彼をこのままの体勢にさせておくのは、尚更申し訳ない。
説得の末、ようやく顔を上げてくれた。涙でぐちゃぐちゃになってしまっている顔を見るのが辛かったが、視線はそらさないよう努めた。
「平井君は本当に何も悪くない。それを言うなら、悪いのは俺だ」
「なんで……っすか……っ、斎…藤ざんは……ぅ、ずっとこっちにいて……何も……」
「こっちにいたから問題なんだよ。今回の事は、俺に責任がある」
宥めながら、俺はある出来事を口にする。それは、ずっと、誰にも告げず、内に秘めていた事。
最初のコメントを投稿しよう!