父と子

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とある日、俺は久しぶりに地元に戻った。もちろん、香澄とよりを戻すためじゃない。隆司は俺の記憶が正しければ18歳で、卒業の時期。進路が気になっていたし、あわよくば、高校の卒業式での隆司の姿が見たいと思ったのだ。 だが、久々に戻って知ったのは……、隆司が亡くなっていた事と、亡くなってからも半年間養育費を受け取り続けていた元妻。内縁の夫がいる事。そして……、遺骨の入った骨袋が、適当に床に放られていた事。 『隆司の遺骨を、こんな無下に扱いやがって……位牌はどうした!? 仏壇は!? お墓は!?』 『知らないわよそんなの! 見つからないなら捨てたんじゃないの? 仏壇やお墓なんてあるわけないでしょ。男と暮らしていくのに、邪魔になるだけだし』 『なんだとお前……っ、自分の息子なんだぞ!!』 『うっさいわね! ていうかあんたが言える話じゃないでしょ!? 隆司置いて出て行ったくせに、何様のつもり!? まさか養育費だけで、子育てしてる気になってたんじゃないでしょーね?』 『っ……』 『隆司捨てて出て行ったあんたが、よくそんな事平気で言えるわね。お金返して欲しいなら返すけど、さっさと出て行ってよ。あんたはもうこの家を捨てたんだから、帰ってくる資格なんてないのよ』 「──で、結局、金は返さなくていいとだけ言って、そのまま戻ってきた」 ゆえに、隆司の詳しい死因も知らなくて、今初めて知った。 その事実も含め、改めて思う。 「だから、平井君は何も悪くない。 俺が何かしら行動してやれていれば、少なくとも平井君がこんな風に、感じなくていい罪悪感に蝕まれる事も無かったんだ」 例えば、あのような家庭環境の中にさらされるくらいなら、隆司を連れてくればよかった。そうすれば免許も取らせてやれたし、バイクも買ってやれた。もしかしたら、事故もなかったかもしれない。 実際は、養育費が隆司の為に使われる事はほとんど無く……、そんな事も知らずにのうのうと暮らしていた自分が、本当に許せなかった。 「香澄に隆司を捨てたと言われて、何も言い返せなかった。当然だな。 隆司も置いて出て行った俺の事を、きっと恨んでいただろう」
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