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自嘲気味に呟いた時だった。
「それは……違うっす」
今まで、黙って話を聞いてくれていた平井君が、ゆっくりと口を開いた。
嗚咽が止み、涙声も目立たなくなった声色で、話を続ける。
「だって……隆司、言ってたっす。
『近い将来、バイクを買ったら、親父の事迎えに行くんだ』って」
「……それ、本当か?」
平井君が、頭を縦に振った。
『迎えにって?』
『小さい頃、親父の後ろに乗せて貰ってさ。そん時、約束したんだよ。
今度は俺が、親父を乗せて走るから、ってな!』
ニッと無邪気に笑う隆司が、続けて言った。
『まあ、俺置いて出ていったくらいだし、向こうが約束覚えてるかわかんねーけど……そこはまあ、男と男の約束だからよ。
会うのも正直ちっと怖えーけど、それでも……な』
『いっしょに走ったりも、したいんだ?』
『ああ、走りたい。だから、怖えーけど、すげー楽しみなんだよ!』
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