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衝撃的だった。約束を覚えていたのが自分だけじゃなかったという事実に、堪らなくなる。
嫌われていると思い込んでいた。だから、会いに行く覚悟がなかなか固まらなかった。
怖かったのだ。
臆病な自分に辟易し、またも激しい後悔に包まれる。
そして……。
「そうか……そうか…っ」
今度は、俺がむせび泣く番だった。さっきまで慰める側だった上に、40過ぎた男が涙を溢れさせるとは情けない思いだったが、それ以上に喜びやら悲しみやらまぜくちゃの感情が強すぎて、止められそうになかった。
二度と叶えてあげられない願い。叶わない願い。
もっと早く、会いに行ってあげればよかったと、ただただ悔やみ続けた。
俺は気が済むまで涙を流し、そして落ち着いてから、隆司の骨袋の前で二人、肩を並べて拝んだ。
後悔と、謝罪と、感謝と……もう口では伝えられない思いを、ただひたすら念じ続けた。
それから、煮込みに煮込んだ鍋を二人で囲み、口にする。
バイクの事はもちろん、隆司の事や、身の上話等を交えながら、お互いに箸を進めた。
肉は、すっかり固くなっていた。
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