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二ヶ月程後の事。
ぽかぽかと、温かい季節が訪れた。
俺は支度を終え、仏壇の前に腰を下ろした。
仏壇はもちろん、隆司の為のもの。
自己満足だと言われれば、何も言い返せない。それでも隆司の為に用意してやりたい思いが強くなり、決断に至った。
遺骨も安置してある。
まだ、お墓の準備は出来ていない。
地元にするか、それともこっちにするか、踏ん切りがついていないからだ。
手を合わせる。それから、
「行ってくるよ、隆司」
いつもの習慣で、声を掛けてから、立ち上がり、部屋を出た。
「部屋で待ってれば、呼びに向かったんだぞ」
「だって楽しみっすもん。
俺、父さ……あ、いや、武文さんみたいに、すっげー年上の人とのツーリング初めてだし!」
「ふっ、そうか」
父さん──と言い掛けたところには、触れなかった。
指摘すれば、俺まで照れくさくなり、反応に困りそうだと思ったからだ。
「よし、それじゃあ出発するか、翔」
「うっす!」
ヘルメットを被り、お互いのバイクに跨がった。
全身の肌を撫でる、心地好い風、爽快感等──色々な期待を胸に、秘めながら。
とある日の日曜日。
空が青々と晴れ、太陽が眩しい昼下がりの時。
201号室の隣、202号室に引っ越してきた住人は、俺に新しい未来を与えてくれたのだった。
(了)
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