父と子

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とある日の日曜日。 空が青々と晴れ、太陽が眩しい昼下がりの時。 201号室の隣、202号室に引っ越してきた住人が、俺にある記憶を思い起こさせた。 「はじめまして。今日から隣に越してきました、平井 翔(ヒライ カケル)といいます。 よろしくお願いします!」 扉を開けるとそこに立っていたのは、高校生か、あるいは卒業したばかりかというくらいの少年だった。 にこにこと明るい笑顔で、俺を出迎えてくれる。 「俺は、斎藤 武文(サイトウ タケフミ)だ。よろしく。 平井君は、学生さんかな?」 「あ、はい! この春から大学生で、地元からこっちに越してきましたっす!」 「……そうか。まあ、引っ越してきたばかりで慣れないだろうから、わからない事があったら何でも聞いてくれよ」 「は、はい! ありがとうございます!」 そう言って、ペコッと頭を下げる平井君。 彼は、俺が扉を閉めるまで、その太陽のような表情を浮かべてくれていた。
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