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「って事は、今18歳、か……」
呟きながら、部屋の棚に置いてある骨袋に、視線をやる。
俺の息子、隆司(タカシ)は、既にこの世にはいない。死因は、バイクの運転中に起きた事故。
それを知ったのが、つい最近の話。その更に半年程前に、隆司は亡くなっていた。
と言うのも、俺と、隆司の母──香澄(カスミ)は、八年前に離婚している。理由は、性格の不一致。結婚して、子どもが生まれて、何かと言い争いが絶えなくなり、そのまま離婚。俺は生まれてからずっと住んでいた地元を離れ、そこから片道二時間のこの地区にやって来た。
色々と手続きを済ませてからは、全く会っていなかった。隆司にもだ。養育費は毎月口座に振り込んでいたが、それ以外で二人との繋がりは、数年間一度もなかった。
ゆえに、発覚が遅れた。
俺の脳内で、隆司の姿が八年前で止まったまま、隆司は逝ってしまった。
訳あって骨袋は手元にある為、棚に空けた空間を作り、そこに安置している。
線香に火をつけ、拝んだ。
……生きていれば、隣に越してきた平井君と、ちょうど同じ歳だ。
閉じた瞼の裏側で、そんな考えが、またも湧き起こる。だからどうしたという話。
よくある出来事だ。
進学した学生が、新しい土地でアパートを借り、隣人になるなんて事は。
今までも、何度かあった。
でも今回に限って、不思議と胸がざわつく。平井君を見た直後、息子の顔が脳裏を過ったからだろうか。
それとも……。
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