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それから数日後。
駐輪場で平井君を見掛け、あるものが目に入り、声を掛けた。
「良いバイクだね」
「あ、斎藤さん!
俺が二年前免許取った時に、母さんが買ってくれたんっす!」
「こんなに綺麗なら、余程大切に乗っているんだろうね」
「はいっ。まあ、一回修理に出した事はある……」
不意に、彼の言葉が止まった。
不思議に思い顔を見ると、饒舌な彼が珍しく、表情を歪ませ、まるで言葉に迷っているというか、挙動不審な様子で……。
「あ……いや、お気に入りっすよ」
どこか困ったような笑顔で、動揺を気取られないようにと努める姿。
なんとなく、俺はその様子に気付かなかったフリをして、微笑みを返す。
「俺も昔、よくバイクに乗っていてね。
よかったら今度、話聞かせてもらえないかな」
「もちろんっす!」
その日から、たまに玄関前等でばったり会っては、主にバイク談義に花を咲かせた。
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