父と子

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そして……。 「──本当にっ、すみませんでした!!!!」 平井君がその場に膝を付き──かと思うと額を床に付け、俺に頭を下げたのだ。 何が何やら意味が分からず、えっ……? と驚きの声しか零せない俺。 「隆司が……っ、死んじまったのは……俺の所為なんです…!!」 「え……?」 また、俺の口から同じような声がもれる。全く予想もしていなかった展開に、理解が出来ず、混乱している。 平井君が何故隆司の名前を知っているのか、よりも、何倍も衝撃的な言葉が、頭の中を唯一支配した。 「……どういう事か、聞かせてもらえるかな」 ようやく絞り出せた言葉で、続きを促す。 心の準備は出来ていなかったが、それでも知りたい欲求がうんと勝ったからだ。 「あの日……っ、隆司が事故った日……、バイクを貸したのは俺なんっす…っ。 隆司が……お金が無いからってバイトして、16ん時に免許を取って……っ、でも高三になっても……ひっぐ、バイト代だと少なくて……っ……欲しいバイクまだ買えないって……っ、だから俺……あの日……うっ……、バイク隆司に貸して……事故って……っっう……」 最後の方には嗚咽で聞き取りづらくなっていたが、大体はわかった。 事故当日、隆司達は、同級生のバイク仲間で集まっていた。隆司は、平井君の後ろに乗せてもらっていた。 日が沈むまで思う存分走り、解散となったのだが、その際隆司が、俺も早く卒業してお金稼いでバイク運転してぇなー、と言っていた事が、平井君は気にかかったらしい。 そこで、みんなと別れて二人きりになった後、提案した。 自分のバイクを運転してみるか、と。隆司は最初、断った。一年近くブランクがあるし、事故を起こして廃車にしてしまう事を恐れたからだ。 けれども、走りたい気持ちに嘘は付けなかった。平井君の押しにも負け、それじゃあ少しだけ、と教習所以来久しぶりに、バイクに跨った。 それから、夜の街を走った。 走って走って、楽しそうに声を上げる隆司に、平井君も嬉しくなり……だが、のちに事件が起こってしまう。 突っ込んできた車を避けようとして、ガードレールに衝突したのだ。平井君は、骨折だけで済んだが、隆司は当たり所が悪かったのだろう。 目覚める事無く、息を引き取った。
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