第14章 賢い選択

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「愛美は、ハルを取ったわけじゃない。だって、私とハルは、別れていたんだから……一方的な私の逆恨みだったんだから。私こそごめん」 優しく背中をさすってくれる愛美の手のぬくもりが、ぬかるんだ心を温めてくれる。 「じゃあ、仲直りだな!」 劇団員の男が、やんちゃさの残る笑顔で私たちに声を掛けてくる。 仲直り…… 「いいの?」 愛美に酷いことをした後ろめたさから……すがるように聞いた。 「もちろん!」 目を大きく開いた後に、笑顔と共に返答してくれた愛美の温かさに、また涙が、溢れてきて言葉が出てこない……。 久々に感じる安心感という心地よさを全身で感じたくて、愛美に抱き着くと、私の背中に手を回し包み込んでくれる愛美も泣いていることに気付いた。 「真樹と仲直りしたかった……だって、リュウちゃんに殴られた後に……真樹が来てくれたことが、本当に嬉しくて……嬉しくて……」 開店前の3人しかいない薄暗いバーは、殺風景だ。だけど、私の視界は、温かい涙で煌めいていた。
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