第1章

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   八 『過去へ戻る方法まとめ  ①寝る前に過去のことをたくさん思い出す  ②何日かがんばると、過去の出来事をひんぱんに夢に見るようになる  ③夢の中で「これは現実だ」と思いこむ  ④何日かがんばると、だんだん夢の中が現実に思えてくる  ⑤そのうち夢の中に、過去の自分が登場してくる  ⑥⑤の状態になったらアタックチャンス!  ⑦気合いを入れて、夢の中の自分の体を乗っ取りましょう!  ⑧無事乗っ取れたら、タイムトラベルは成功です。   ただし、この旅には片道きっぷしか用意されておりません。   実行の前に十分ご注意ください……』 「……まさか、ね……」  わたしは腕組みをしながら考え込んでいた。  アパートの自室。目の前にはパソコンのディスプレイ。  表示されているのは、笹山から教わった匿名掲示板のスレッドだ。  一時間ほど、画面を見つめたままわたしは固まっている。  実はもう、確信していた。  アリスは間違いなくタイムトラベラーだ。  きっとこの手順書に近い方法で未来から過去へ戻ったに違いない。  けれどあの事故で記憶の大半を失い、自分自身がタイムトラベラーであることすら忘れてしまったのだ。だから、時折思い出す未来の記憶のことを「予知能力」と勘違いしてしまっていたのだろう。  けれど、なぜ彼女は死ななければならなかったのだろう。  それも、このスレッドを読んで自分がタイムトラベラーであることを思い出した直後に。  いくら考えても、わからなかった。  ……わからないのなら、本人に直接聞いて確認するしかない。  わたしの決意はすでに固まっていた。  わたしもタイムトラベルをしよう。  アリスが生きている時まで時間を遡り、それから今度こそ、アリスと二人でいつまでも幸せな人生を歩むのだ。
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