2人が本棚に入れています
本棚に追加
四
まだ寒い冬の終わり頃。学校からの帰り道に、わたしは呟いた。
「それにしても、再来月からもう、わたしたちも高校生かぁ……。なんだか信じられないね、アリス」
わたしたちは二人とも受験を終え、あとは卒業式を待つばかりの身分となっていた。
「そうね。……でも、高校もあなたと同じところになって本当によかった! わたしたち、これからもずっと一緒にいましょうね、カナミ」
「う、……うん……」
そんな風に言ってくれるのは、本当のところすごくうれしい。
こういうことを何気なく言ってくれるアリスのことが、わたしは大好きだ。
いっそ、愛してると表現しても過言ではないくらいに。
――けれど、その気持ちは一生押し殺して、誰にも気づかれないように生きていくつもりだった。他ならないアリスのために。
わたしはここで、彼女から少し距離を取らなければならない。
「ねえ、そのことなんだけど、アリス」
わたしは、ずっと考え続けていたセリフの最初の一言を口に出した。
「わたし、高校に入ったら、運動部に入ろうかな……」
「え? カナミが運動部? それはまた。……ずいぶん思い切ったことを考えたわね。あなた、体育の成績いくつだっけ?」
「うるさいなあ……。茶化さないでよ。今度こそこの究極的な運動音痴を克服するんだから!」
「はいはい。……で? なんの部活に入るの?」
「……それはまだ、決めてないけど」
「なによそれ。……そーだ! それじゃテニス部にしなさいよ! テニスなら教えてあげられるし、余分なラケットだっていくつも持ってるし」
「えっとね、アリス……」
「あー、でも、朝練とかきびしいとイヤかも。ほら、わたし朝弱いの、カナミも知ってるでしょ? できれば朝練のない、比較的ゆるめの部活を所望します」
アリスは、おどけるように小さく舌を出してこっちを見た。
わたしはその目を見つめ返しながら、用意していたセリフを言う。
「ご、ごめん、アリス。わたし、部活には一人で入ろうかなーと思ってて」
最初のコメントを投稿しよう!