第1章

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   四  まだ寒い冬の終わり頃。学校からの帰り道に、わたしは呟いた。 「それにしても、再来月からもう、わたしたちも高校生かぁ……。なんだか信じられないね、アリス」  わたしたちは二人とも受験を終え、あとは卒業式を待つばかりの身分となっていた。 「そうね。……でも、高校もあなたと同じところになって本当によかった! わたしたち、これからもずっと一緒にいましょうね、カナミ」 「う、……うん……」  そんな風に言ってくれるのは、本当のところすごくうれしい。  こういうことを何気なく言ってくれるアリスのことが、わたしは大好きだ。  いっそ、愛してると表現しても過言ではないくらいに。  ――けれど、その気持ちは一生押し殺して、誰にも気づかれないように生きていくつもりだった。他ならないアリスのために。  わたしはここで、彼女から少し距離を取らなければならない。 「ねえ、そのことなんだけど、アリス」  わたしは、ずっと考え続けていたセリフの最初の一言を口に出した。 「わたし、高校に入ったら、運動部に入ろうかな……」 「え? カナミが運動部? それはまた。……ずいぶん思い切ったことを考えたわね。あなた、体育の成績いくつだっけ?」 「うるさいなあ……。茶化さないでよ。今度こそこの究極的な運動音痴を克服するんだから!」 「はいはい。……で? なんの部活に入るの?」 「……それはまだ、決めてないけど」 「なによそれ。……そーだ! それじゃテニス部にしなさいよ! テニスなら教えてあげられるし、余分なラケットだっていくつも持ってるし」 「えっとね、アリス……」 「あー、でも、朝練とかきびしいとイヤかも。ほら、わたし朝弱いの、カナミも知ってるでしょ? できれば朝練のない、比較的ゆるめの部活を所望します」  アリスは、おどけるように小さく舌を出してこっちを見た。  わたしはその目を見つめ返しながら、用意していたセリフを言う。 「ご、ごめん、アリス。わたし、部活には一人で入ろうかなーと思ってて」
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