第1章

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なぜだろう。 誰に説明されたわけでもないが オレは今のこの状況を 理解していた。 彼女がオレに 特に何も説明しなかった所を見ると 彼女もまた こうなった時に 誰に言われるでもなく 自然と、自分のやるべきとこを 理解していたのだろう。 オレは今から 彼女から受け取ったこの「こども菌」を 3人の大人に 移さなければいけない。 移し方は 「対象者に触れること」 大人と言っても 誰でもいいわけではない。 ちゃんと条件がある。 1つ目は 対象者が 20歳以上であること。 2つ目は 対象者が 自分の携帯メモリーに登録されている人間であること。 ただし、初めて「こども菌」を移された時点で、登録されている者に限る。 1度「こども菌」に感染して5才児になってから メモリーを増やしてもムダ。 意味がないってことだ。 「こども菌」を持つ5才児に触れられた大人もまた 5才児になってしまう。 しかし対象の大人3人に触れることができれば 元の大人の姿に戻ることができるのだ。 今の 須藤のように。 与えられた期間は 1週間。 その間に 3人の大人に触れなければならない。 もし 触れられなかったら… もう2度と 大人に戻ることはできない。 須藤にとってオレは どうやら「3人目」だったらしい。 オレの連絡先は 須藤の携帯に登録されていたのだろう。 対してオレは 須藤の連絡先を知らなかった。 だから オレが大人の彼女に触れても 彼女が感染することはない。 彼女もオレも それを理解していたから 大人になった彼女が オレの前から逃げ出すこともなかったし オレはためらいなく 彼女の頭に触れることが出来た。 「こども菌」をうつされたことを 恨んでいないわけではないが 彼女がオレの連絡先を ずっと携帯のメモリーに登録してくれていたこと。 それが思ったより 嬉しかったらしい。
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