第1章

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(1) 「じゃあ、聡太を今日一日よろしくお願いします。」 と、うちの玄関に現れたのは 昨日の夕ご飯のとき話題になったソウタだった。 お母さんの聞いた話によると 隣の三田のおじいちゃんの家に 小学校2年生の男の子が引っ越してきたらしい。 正確に言うと、ソウタの親は共働きなので、 夏休みの間、三田のおじいちゃんの家で 預かることになったそうだ。 ここまでならただの小学生の話なのだが、 ソウタはどうやらすごい天才児で、 とんでもない将棋の才能があり 大人でも歯が立たないほどらしかった。 そんなもんだから、私はソウタのことを ガリ勉メガネと勝手にイメージしてたんだけれど、 目の前に現れたソウタは もやしではないが 数字の5とプリントされたTシャツを着た、 どちらかというと女の子っぽい顔をした、 なんていうか普通の小2のチビだった。 高学年の私のお姉ちゃんは、 低学年のチビのおもりなんてゴメンだとばかりに 「まきちゃんち(家)に行ってくる」 と宣言しじゃあねーと手を振り 「夕ご飯の前には帰ってきなさいよ」 というお母さんの声を背に 外へ遊びに行ってしまった。 残った私に三田のおじいちゃんは 「聡太は小学2年生だから美咲ちゃんの一つ下だよ。 仲良くしてね。」と言って去って行った。 (2) 残されたソウタに私は「上がんなよ」と言ったら、 ソウタは靴を脱いで揃えてから私の後をついてきた。 二階の私とお姉ちゃんの部屋へ行き、 ソウタは何が好きかわからなかったので ゲームを置いてある棚を指さし 「何して遊ぶ?」と聞いた。 「人生ゲームがいい」とソウタは答えのだけれど、 ルール説明するのめんどくさいなと思い 「ソウタしたことあんの?」と聞いたら 「ある」というので、 人生ゲームをすることにした。 床に人生ゲームのボードを広げながら ここぞとばかりに「私、銀行係したい」と言ってみた。 お姉ちゃんとやるときは いつもお姉ちゃんに銀行係を取られるので 一度やってみたかったのだ。 銀行係の取り合いになるかと思いきや ソウタは「うん、いいよ」とあっさりゆずってくれた。 初めて感じるお姉さん的ポジションにちょっとうれしくて 年下と遊ぶのもけっこう楽しいかもと思った。 ソウタは経験者だけあって、スムーズにゲームは進んだ。 ルーレットを回しマスを進めると 「あ、給料日だ。お金ちょうだい。」 と銀行係の私に言った。
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