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それなのに人は、みんな顔が違うでしょう。あなたはとても美しい顔立ちをしているけれど、私はとても醜い顔をしている。誰もが遠のくほどに醜くい……。でもそれは自分の力ではどうしようもないことだから、もう嘆くのはやめることにしました。
だけど、心は違う。自分の想いによって、心は何とでも姿かたちを変えることができます。だから私は、せめて心だけでも美しくありたいのです。いつか、私の傍を選んでくれるかもしれない人のためにも。……そうでなければ、私は本当に孤独になってしまうから」
いつしか、男は口を半開きにして女性の顔をジッと見つめていた。
我に返ったのは、女性が切なげな表情で自ら目を逸らしたときだった。
「あ、あの……すみませんでした」
何故かそう言葉にしていた。後ろめたい気持ちがあったという表れだった。だが、女性はやさしく首を横に振って、ふわりと微笑んだ。
「いえ、気にしていませんよ。綺麗な花には毒があるものです。それに、慣れっこですから」
それは女性の気遣いなのか、それとも単なる毒づきなのか男にはわからなかった。
ゴブリンのようないびつな顔で小さくお辞儀をして、そのまま花々に囲まれる自宅へと戻って行く後ろ姿から、男はいつまでも目を外すことができずにいた。
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