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その行為はきっと…。
摘便に似ている。
まて、まて、ヤバイじゃないか。
ヤられるだけでも、考えられないくらいヤバイのに。
そのうえ不要なモノがコンニチワしたら…。
死ぬ。死ねる。
あ、公園のトイレとかも言ってたか?
もう、ホントにうっかりやらかしちゃいそうじゃないか。
「ああ!もうどうすりゃいいのか全然わかんね!」
頭を抱えて突っ伏したオレに、
「じゃ、皆川じっくり教えてやるから昼休みに数学準備室に来い。」
板書中の数学教師が、しょうがないなといった顔で振り返って言った。
昼休みは教室にこもってやり過ごすつもりだったのに、何故か数学準備室に行くハメになった。
坂崎のことも、どうにか対策を考えなきゃいけないはずだけど、オレの頭じゃ『逃げて逃げて、ほとぼりが冷めるのを待つ』くらいしか思いつかない。
行きは坂崎に出会わないようにと、慎重すぎるくらいコソコソと教室を出たのに、やたら張り切ってミニ個人授業をする数学教師に疲れ、帰りはなんにも考えてなかった。
「アドレス。」
いきなり声をかけられてもただボーっと振り返って、そこにスマホをチラつかせる坂崎の顔を見て飛び上がった。
振り返って飛び上がるとか、マンガみたいでハズカシイんだけど…なんて考えるオレはやっぱりちょっと危機感がたらないようだ。
スマホを掲げながらの無言の圧力ってヤツにやられて、あせってメアドを教えてしまった。
『蛇に睨まれた帰る』だっけ?
…あーあ、オレもここから早く逃げ帰りたい。
坂崎の顔はとてもじゃないが直視できず、アイツの手元のスマホをじっと見つめる。
カバーをつけてはいるが、隙間からのぞくボディカラーは可愛らしいピンクだった。
なんでそんな色にしたのか、昨夜は気付かなかったその色に違和感しかない。
「明日の放課後、3階の予備教室で。」
それだけ言って坂崎は立ち去っていった。
なんでもないような後ろ姿。
なのに、無かった事にはしてもらえない。
どうやらオレの中には、
『あんなことされたけど、あれは何かの間違いで、何もなかったかのように取りつくろってくれるんじゃないか』
って淡い期待があったらしい。
もしそんなだったら、オレだってちょっと怒って、それから許してやらないこともない。
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