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ごっ!
ドアを開けたら、額からから鈍い音がして。
視界がぶれて。
俺、床に倒れた。
「ぁ あ"…う" あ"ぁぁ…?」
「こんにちは! 今日から隣に引っ越してきたカナコだにょ!」
は?
子供?
「ふぅ! 隣にお兄さんがいてくれてたすかったにょ! もう少しで間に合わなくなってたのん!」
真っ赤に染まった視界には、『バールのような物』がコンクリの床をガリガリさせてるのが映る。
「あの病気が広まってからもうここら辺で生きてる人間は、カナコとお兄さんくらいしかいなかったから本当に助かっにょ~♪」
俺の血が飛び跳ねた唇があどけなくほほ笑む。
なんだ?
この子は何を言っている?
「お兄さん! 生きててくれて本当にありがとう…って! ああ! まだ死んじゃ駄目だにょ! 生きていないと『ご飯』だって分からなくなっちゃう!」
生きる?
ごはん…?
そして、俺 見えた。
『カナコ』の背後に立つソレ。
世界中に広まったウイルスの所為で、ほとんどのニンゲンはソレになった。
「お姉ちゃん! 早く~ごはんが死んじゃうよ! 食べて食べて~♪」
どうして?
内臓を貪られながら、俺は『カナコ』を見る。
ゾンビと呼ばれるソレは、食べるものが無くなれば必然的に活動できなくなり一か月も『食事』が出来なければやがて自滅する…だから逃げおおせればと思っていたのに…。
「お姉ちゃん…お姉ちゃんはカナコが守るもん…だからずっとずっと一緒…」
まるでがらんどうの様な目をした少女は、ゾンビになった姉の為に残り少ない生存者を狩り続けるんだろう。
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