作家に対するあやふやなイメージで遊んでみる

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ええ、そうなんですけどね、とぺこぺこ 電話に謝りながら、 後ろの男たちの気配を横目で見れば、 どうしたわけか坂口が、 買ったばかりの真新しい真っ白な冷蔵庫と がっぷり四つに組んで相撲を取っている。 頼みの夫はその脇で団扇を軍配代わりに行司をやっている。 普段は大人しい 善良な男なのに、 とにかく人に流されやすくて影響を受けやすい、 そのうえ悪ノリしやすいところへ持ってきて 友達が太宰と坂口である。 人の縁に見放された自分の夫の お人よしな笑顔を見ているうちに だんだんムカムカしてきて、 とうとうヤケクソで 「お金はちゃんと払いますから! 仕方ないんですよ! 坂口安吾が来てるんです!」 と大声で喚いて受話器を叩き置いてしまった。
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