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時間が経てば、
凪子の西川くんへの気持ちは、
また、恋に近いものになるかもしれないなんて、
甘い考えを持っていた私。
「まだ、葵が仕向けて事件を起こしてくれていたのならって………
そう信じていたかったのに、
まさか西川くんがそこまでして私と別れたがってたなんて………凄くショックで」
「………」
何も言えない。
凪子の中で私の汚名が晴れていたとしても、
彼女の中の私への恨みは薄れることはなかっただろうから………。
「葵………いいの? 面接にそろそろ向かわないと」
車の時計を見て凪子が、車から降りようとする。
「………大丈夫、あ、ちょっと、待って」
その凪子の細い腕を掴んだ。
「どうして、凪子に手を出した男達は、西川くんや岩田やその兄たちの事を言わなかったんだろう?」
裁かれなくちゃいけない人間は
他にもいたのに。
「そこまでは話は流れてこなかった………ただ、裏の世界はへんな恩義とかあるのかもしれない」
岸島は、
私の事を知って、凛々子に近付いてきたのかもしれない。
「葵………」
「………うん」
鳥肌がたって、
背中がゾクゾクとしてくる。
「葵に話して、事件をまた掘り返したいんじゃないの。
だけど、
謝りたかった………」
「え?」
声は出るのに、震えて、
ちゃんと、伝えたいこと話せてないまま、
「周りから責められて、葵が登校拒否になって、
引きこもって、
私、ザマァミロって思ってたから」
「………それは………」
「同じように、一人ぼっちになって、
病んでしまえばいいって恨んで、
本当に悪いのは葵じゃないって、
周りにも、親にも、
言えなかった」
凪子の方の糸が、
先に切れてしまった。
「巻き込んで、ごめんね………」
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