第1章

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「結構、体力も使うし汗かく仕事だけど、徐々に慣れてきますから」 事務所入り口まで見送ってくれた社長は、 私がちゃんとやれるか心配なのだろう。 検査員の仕事と違って、 黙って座ってるだけではないので、 ある意味体にいいかもしれない。 ………それはさておき。 凛々子に、岸島のこと何て話そう? 確証はなくとも、 今思うと、 あれ?って事、いくつかある。 まず、 凛々子に店で会った時に、 弟が私と同級生だと話してたってこと。 他に話すこと一杯あるだろうし、奇遇過ぎやしませんか? そして、 仕組まれたような、 名字違いの弟を含めたいきなりのwデート。 そこで私をヤって写真や動画を撮るあたり、 弱味を握りたがっていたとしか思えない。 何故、今さらそんなこと? 凪子ではなく、私に? 「あれ? 珍しくどこか出掛けてたの? 葵に買い物頼もうとしてたのに、 起きたらいないんだもん」 あいつらが出所してくる前に、 私を手の内に納めておきたかったのか。 「職安だよ」 「いいのあった?」 よく分からないけど、 岸島がまともな人間じゃないことは確かだ。 「凛々子………どこいくの?」 帰宅して玄関で遭遇した凛々子は、 お洒落して、 何処かへ出掛けるようだ。 「岸島さんとランチデートよー♪ てか、もう2時ね。 どこに連れてってくれるのかな?」 まともな男と付き合えて、 凛々子は、人生での絶頂期を迎えている気分なんだろう。 できたら、 その幸せを壊したくはないんだけど。 「………何よ、怖い顔して。 私が昼間っから、デートしたら不満なわけ?」 「あのさ………」 だけど、このまま凛々子に黙っているなんて、私にはできない。 「岸島さんって、本当に建設会社の社長なの?」 私には無理でも、 凛々子には普通に女として幸せになってほしいもの。
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