はじめに

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 誰も知らない 知られちゃいけない  デビルマンが誰なのか  俺は、親父にそうキツク言われた。  だから、誰にも言わない。  デビルマンが親父だってことを。  俺は不動守。俺の親父は不動明、母親は不動美樹。  親父は、不動明という人間の体を持ち、人間として暮らしている。しかし、中身はデビルマン。  本当の不動明は、17歳という若さでこの世を去ったらしい。  親父はその不動明の体に憑依して、人間界をデーモン族のものにするために、選ばれた傭兵だった。  ただ、偶然、不動明という青年は、牧村夫妻、つまり美樹の両親にとってわが子にしてもいいくらい馴染のある存在だったらしい。親父は牧村家にまんまと居候した。  本当なら、このままスパイを続けながら、人間界に侵食するつもりだった。  しかし、母さん(牧村美樹)と出会い、母さんの美しさや優しさに触れ、惚れたんだな。  あっさりデーモン族を裏切り、人間界のために次々と仲間を倒していったんだから。  母さんも親父を好きになって、正体を知った後も二人は付き合いを続けた。  そして、17年前二人は結婚して俺が生まれた。  この話を聞かされたのは昨日。俺の16歳の誕生日だった。  親父は言った。 「お前の最近の様子を見ていると、デーモン族時代の俺を思い出す。  お前の心はきっと今にデーモンに支配されてしまう。だから、全てを話す決心をした。  これからお前は、人間の心をデーモンに支配されないように、お前自身の中で戦うんだ」  こんな奇天烈なことを言われて、はい、そうですか。と納得する奴がいたらお目にかかりたいぜ。 「親父は、ホントにそのデーモン族とかいう悪魔なのか?」  俺は、半信半疑どころかほとんど信用していなかった。  しかし、親父の方は至って本気の表情だ。  そもそも、親父は母さんのことしか真面目にならない。「世の中どうなってもいい」が親父の口癖だ。  だから、母さんに惹かれて、母さんのために全てを敵に回したというところだけは、妙に説得力があった。
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