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ということは・・精神が弱ければ、デーモン族に支配されてしまうという事だ。
弱い精神とは、どういうモノなのだろう?俺は辺りを見渡した。
どこかに精神の弱そうな奴はいないだろうか?
コンビニの前でたむろっている、ヤンキー集団、これは・・・違うかな。
居酒屋から出てくるサラリーマン、これも・・違うだろ。
黙々と塾に向かう小学生、これの訳ないか・・・
一体どこにいるんだ?弱い奴・・・弱い奴・・・・俺は周りを見渡した。
すると、路地裏でうずくまっている浮浪者が見えた。
浮浪者!?これだ!!
俺は指を鳴らした!!浮浪者っていうのは、あれだろ?社会のドロップアウトだ!
これ以上精神の弱い奴なんて、世の中にいるわけない!
俺は、その浮浪者に近づいて声を掛けた。
「おい!そこの浮浪者!」
蹲っていた男がゆっくりとした動作で顔を上げた。
「おい、誰が浮浪者じゃ?ガキが・・シバくぞっ!」
見れば、その腹にはナイフが突き刺さっていて、そこから波紋のように黒々としたシミが広がっていた。
「ひぃ~!」
俺は頭からつま先まで真っ青になって震えあがった。
「おい!ここに電話せぇ・・組のモン呼ぶから・・・血が目に入って良く見えんのじゃ」
もともとは、赤かった血がどす黒く変色したんだろう、渡された名刺にはべっとりと黒い液体がこびり付いていた。
「は、はい、はい」
俺は震える手で、携帯番号を押した。そして電話をその男に押し付けた。
「おい、お礼してやるから、ここに居ろよ」
そう、男は言って「わしじゃ・・鉄砲玉にやられたわ・・・」と苦しそうに話していた。
俺は、青いままで、少しづつ後ずさった。そして、もう耐えきれなくなって
「すみません、さよなら~!!」
と叫んで走り出した。
家に帰ると、親父が母さんの膝枕でテレビを見ていた。
その姿を見て一気に力が抜けて
「親父・・俺デーモン族になるなんて嫌だ・・」と呟いた。
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