はじめに

5/6
前へ
/7ページ
次へ
 ということは・・精神が弱ければ、デーモン族に支配されてしまうという事だ。  弱い精神とは、どういうモノなのだろう?俺は辺りを見渡した。  どこかに精神の弱そうな奴はいないだろうか?  コンビニの前でたむろっている、ヤンキー集団、これは・・・違うかな。  居酒屋から出てくるサラリーマン、これも・・違うだろ。  黙々と塾に向かう小学生、これの訳ないか・・・  一体どこにいるんだ?弱い奴・・・弱い奴・・・・俺は周りを見渡した。    すると、路地裏でうずくまっている浮浪者が見えた。  浮浪者!?これだ!!  俺は指を鳴らした!!浮浪者っていうのは、あれだろ?社会のドロップアウトだ!  これ以上精神の弱い奴なんて、世の中にいるわけない!  俺は、その浮浪者に近づいて声を掛けた。 「おい!そこの浮浪者!」  蹲っていた男がゆっくりとした動作で顔を上げた。 「おい、誰が浮浪者じゃ?ガキが・・シバくぞっ!」  見れば、その腹にはナイフが突き刺さっていて、そこから波紋のように黒々としたシミが広がっていた。 「ひぃ~!」  俺は頭からつま先まで真っ青になって震えあがった。 「おい!ここに電話せぇ・・組のモン呼ぶから・・・血が目に入って良く見えんのじゃ」  もともとは、赤かった血がどす黒く変色したんだろう、渡された名刺にはべっとりと黒い液体がこびり付いていた。 「は、はい、はい」  俺は震える手で、携帯番号を押した。そして電話をその男に押し付けた。 「おい、お礼してやるから、ここに居ろよ」  そう、男は言って「わしじゃ・・鉄砲玉にやられたわ・・・」と苦しそうに話していた。  俺は、青いままで、少しづつ後ずさった。そして、もう耐えきれなくなって 「すみません、さよなら~!!」  と叫んで走り出した。  家に帰ると、親父が母さんの膝枕でテレビを見ていた。  その姿を見て一気に力が抜けて 「親父・・俺デーモン族になるなんて嫌だ・・」と呟いた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加