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白峰仁
僕の記憶が正しければ、僕の手は血に濡れている。正確に言うと人を殺めたのだ。それ自体はあまり恐怖ではない。問題は僕が臆病過ぎて罪悪感の余り自殺したいということだった。
あんな人間でも殺したら罪悪感があるんだな。
一人の人間の命は大きいという。その癖、やってることは人の悪口を言ったり、喧嘩したり、嫌がらせをしたり、まるで認知症の老人か子供のすることだ。
僕は人間という生き物にウンザリしていた。
僕の働くE-3作業所の上司は僕にやたらめったら厳しく当たった。それを見た同僚は嘲笑いながら、合コンの話をしていた。
僕の顔が醜い?
だから、そんな仕打ちをするの?
僕は混乱した頭で同僚の和彦(カズヒコ)に泣いて縋った。
「僕が悪かった。だから、もうそっとして置いて下さい」
和彦は奇妙な物を見る目で僕を見る。工場の機械が自動でチュパチップスを作る音で耳を痛めそうだった。
「ゴミを嘲笑って天罰が来るならやめるよ。当たり前だろ?」
僕は和彦に触れていた手に力を入れた。
「僕が死んでもいいんですか?」
和彦は乱暴に僕の手を振り解き、大声で叫ぶ。
「白峰仁(シラミネジン)、自殺宣言!!なかなかウケるジョークを言えるようになったな!白峰君」
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