第1章

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僕は和彦を殺すことに成功した。だけど、捨てるべき物が捨てられない。恐怖心、死体、何より罪悪感。 僕はーー。 いや、死にたくないからこそ、考えているんじゃないか。最悪、自首しよう。刑務所の方が父さんと母さんが心配してくれるんじゃないかな? 僕は紅茶を一気飲みした。少しは落ち着くと思った。それでも足りず小さなアパートの一室でウロウロ歩き回った。 和彦の捜索が始まる前に和彦を〝食べて〟しまわなければならない。胃袋に入れば死体遺棄にはならない。僕なりの愛情表現だけど、世間ではカニバリズムと言われ忌み嫌われている。 和彦を〝食べ〟れば、僕も和彦のような人気者になれないかな? ふと僕は自分が苦しまない方法を思い付いた。 酒嬢海の崖の上の小さな教会に小柄な若神父様がいらっしゃる。懺悔すれば僕の命は助かるかもしれない。 それがいい。 僕は和彦の脳をフライパンで焦がしながら、安堵感に微かな溜息を吐いた。 若神父様は僕に初めて暖かく接してくれた人のような気がする。それどころか僕を初めて人間だと認めてくれた人のような気までしてきた。 僕はチェンソーで風呂場中、紅の世界に現を抜かしつつ、少しずつ料理していった。 もし、嫁さんを迎えるなら料理が出来ないと困る。
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