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夏海凪
俺と姫花は若神父様の元へ訪れた。
「お前、直ぐ車椅子から落ちるんだから、シッカリ掴まってろよ?それしか取り柄ねえしな!」
俺はワザと意地悪な言葉を投げかける。
その一言一言に一喜一憂する姫花を本当は愛撫して抱き締めたかった。
《何よ?煩い》
姫花が俺を見ないようにしながら、ノートに書き連ねる。
俺は教会前の花屋で動きを止めた。
マリーゴールドの花が嗅覚をくすぐる。
店員に3本、花を注文した。1本152円らしい。
俺は、500円玉を差し出し、お釣りを受け取った後、マリーゴールドを姫花に渡す。
「持ってろよ」
姫花が笑顔を隠そうとして、俯くのが分かる。
「お前の姉さんにでもやるんだな」
俺の本心を知ってか姫花は軽く頷いた。
俺には両親がいない。
〝呪い〟を軽く見て父にはサーファーコンテストの優勝を記念に抱き合い、母には頬にキスした。
翌日、2人共、心臓発作で死亡した。心臓が内部破裂しているかのようだった。まるで猛獣が心臓を食い散らかしたかのようで、俺はもう誰にも愛情を示さないことに決めた。特に姫花は絶対、殺してはならない。だからと言って、どこかの男に渡すのは俺の命を誰かに託すぐらい残酷なことだった。
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