第1章

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刺青師剣 私の元へ訪れる迷い子の子羊達を厚く介護するのは私の使命だ。見るからに不揃いの男性4人と女性1人が教会の黒い天使のステンレスアートの下を潜ってやって来た。 小柄で華奢な男性が私の足元へ駆け寄り、いきなり懺悔する。 私も一緒になって自分の創造(想像)する神に祈りを捧げる。 「気持ち悪いヤツもいるもんだな」 海パンに軽く黄色い上着を着込んだ男性が懺悔師を侮辱した。 私は何も言わず、懺悔師の頭に触れる。 それだけで彼が人殺しだと分かった。 「深く彼のため哀しみなさい。彼に許しを買いなさい。彼のために生きなさい」 懺悔師は呆気なく泣き出した。 「若神父様、お許し下さい」 私はスッと手を差し伸ばした。 「大丈夫です。物事は上手くいくと思えばそうなるものです。毎日、許しを求める声をお聞かせ下さい。それが私をも救うでしょう」 一番、神から縁のない男性が軽く舌打ちする。 「17歳のガキが出来ることは臆病風に吹かれた男に欲しい言葉を投げかけることだけらしいな。目、覚ませよ、オッサン」 私は彼の瞳を覗き込んだ。それだけで彼の名前が分かった。 「勇馬、貴方は恋しています。どなたとは敢えて言いません」
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