0人が本棚に入れています
本棚に追加
勇馬がギョッとした様子で私を見る。
だが、いきなり女性、姫花に掴みかかった。
「お前、自惚れてんじゃねえよ」
姫花が何か話そうとするが喉からヒューヒュー音が出るだけで何も言えず、いつも通り俯いた。
凪が勇馬に突っかかる。
「お前、姫花が好きなのか?」
修羅場と化したその場を私は放置して、大声で喧嘩する勇馬と凪の声をBGMに、懺悔師の話を聴いていた。
「いつも夢の中で和彦が私を殺すのです。怖いとお思いでしょ?だけど、何が怖いって私自身、和彦に殺されるのが嬉しいのです」
「認めるのですね?殺人罪を」
「何故、お分かりに?」
私は微笑して、頷く。
「ここには魔物がいるのですよ」
「魔物?」
「〝人獣〟に近いですね。彼は神ではありません」
「〝人獣〟が若神父様に教えるのですか?」
黒と赤と青の生き物が背後で蠢いている。
「子供の頃から〝バーチュ〟は私に語りかけて来ました。刺青師の血は〝バーチュ〟の声なしでは語れない存在なのです」
教会の椅子を勇馬が蹴飛ばす。
凪はまともにそれに当たり、グッタリとした。
「分かったってーの。姫花は俺達のモノな。独占なしっていうことで」
夏海凪には喧嘩も楽しめる余裕があった。
〝バーチュ〟の〝呪い〟が解けるのが先か、自滅するのが先か。
興味深い。
最初のコメントを投稿しよう!