第1章

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勇馬がギョッとした様子で私を見る。 だが、いきなり女性、姫花に掴みかかった。 「お前、自惚れてんじゃねえよ」 姫花が何か話そうとするが喉からヒューヒュー音が出るだけで何も言えず、いつも通り俯いた。 凪が勇馬に突っかかる。 「お前、姫花が好きなのか?」 修羅場と化したその場を私は放置して、大声で喧嘩する勇馬と凪の声をBGMに、懺悔師の話を聴いていた。 「いつも夢の中で和彦が私を殺すのです。怖いとお思いでしょ?だけど、何が怖いって私自身、和彦に殺されるのが嬉しいのです」 「認めるのですね?殺人罪を」 「何故、お分かりに?」 私は微笑して、頷く。 「ここには魔物がいるのですよ」 「魔物?」 「〝人獣〟に近いですね。彼は神ではありません」 「〝人獣〟が若神父様に教えるのですか?」 黒と赤と青の生き物が背後で蠢いている。 「子供の頃から〝バーチュ〟は私に語りかけて来ました。刺青師の血は〝バーチュ〟の声なしでは語れない存在なのです」 教会の椅子を勇馬が蹴飛ばす。 凪はまともにそれに当たり、グッタリとした。 「分かったってーの。姫花は俺達のモノな。独占なしっていうことで」 夏海凪には喧嘩も楽しめる余裕があった。 〝バーチュ〟の〝呪い〟が解けるのが先か、自滅するのが先か。 興味深い。
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