第1章

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私はふと夏海凪に目線が行って、途端にギョッとした。 彼は人間の形をした死神だ。事実、私の頭の中のデータベースでは彼の周りの人間はほぼ全員死んでいる。 刺青師が私の表情を呼んだ。 「諸熊、お分かりになられたのですね」 私は狼狽える訳にはいかなかった。 「夏海凪の件で館を探らせていたのね。彼は生きる死神よ」 白峰仁は私の胸に目線が釘付けになって、顔を赤らめたていた。 「〝バーチュ〟は私に貴女をくれた。ただし、あるカップルに残酷な仕打ちを成した」 夏海凪と荒海勇馬と深海初は相変わらず、教会の中であるにも関わらず姫花ちゃんを弄んでいる。 私は声を小さくしようか考えたが、夏海凪本人はもはやどうしたら姫花ちゃんでイクかしか頭にないようだったので、刺青師の背後で普段の話し方をした。 「貴方はどうしたいの?」 刺青師が冷たい顔を少し和らげて口を開く。 「〝バーチュ〟の機嫌を良くしたいとは思っていますよ」 「そうでしょうね。〝バーチュ〟が果たして本当にいるのか。そして、〝バーチュ〟は何のため、彼と彼女に〝呪い〟をかけたのか。貴方の疑問はそこでしょ?刺青師」 白峰仁が居心地悪そうに刺青師の方へようやく顔を向けた。 「僕は邪魔者らしいですね」
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