0人が本棚に入れています
本棚に追加
白峰仁
若神父様は大人の女性にモテるオーラがある。
僕の恋愛経験なんて、並みの男性と比べたら月と亀だ。僕はモテないどころか女の人に気味悪がられる。この調子だと、一生、自分の作ったマズイ料理を口に運び続けなければならないかもしれない。スーパーの半額のお惣菜が絶品レベルの僕の舌はグルメとは程遠いだろう。
怖いお兄さん達が、可愛い女の子に酷いことをしている。場違いなのに違和感がないのはこの教会自体が曰く付きなせいだろう。みんなおかしくなるのだ。
僕は元々壊れている。和彦の肉を焼いている時、カニバリズムの危険性をネットで見ていた。僕の脳などクールー病になっても良かった。それ程、カニバリズム、別名アントロポファジーに魅せられ、5歳の子供が蟻を潰すのに似た快感を覚えた。
《僕が見えるかい?》
和彦に心の中で囁く。
《僕達、親友だよな。一体化して、もっと近くでいられるよな》
僕の声は確かに和彦に届いていた。
若神父様が気難しげに聖書のページをめくった。
「貴方に託す言葉があります」
僕は若神父様の後ろに立つセクシーな女の人を見ないようにした。
「何でしょう?」
「生きる時、それは死や破滅を受け入れる時です」
最初のコメントを投稿しよう!