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諸熊が姿を消した後、夏海凪が切り出した。
「そうそう、若神父様」
「何でしょう?」
「カルムってヤツの手紙を破いたら、俺達の玩具が怒り出したんだが、どういった人間なんだ?」
私は凪の目を一心に見つめた。カルムとは和訳すると目の前の人物になる。彼は彼自身を問うているのだ。所謂、馬鹿馬鹿しい演伎とでも例えようか。人が人を問う時、何かと自身であることが多い。それぐらい、人間1人の偉大さは怖れるに足るものなのだ。
人間はだからこそ生を生きる。
負の選択を時として選び取り、それを楽しめるぐらいの余裕をもって、神を恨む。神と悪魔が合わさった時、満たされる。
私は穏便に済ませる選択を取った。
「カルムは神の使いです。姫花さんの守護者で間違いないでしょう」
勇馬が私を見下す態度で睨んできた。
「若神父様は凄いよなぁ。〝神の使い〟が見えてよ?俺達にも神の使いが降りて来ないかなぁ~?」
「心の問題です。邪心は光を遮り、神の使いの行手を阻みます。目を閉じた時、一瞬光が見えるようになれば、勇馬、貴方にも神の使いが降りるでしょう」
間が空いた。
「ふざけているのか!?」
勇馬が私の胸倉を掴む。
凪と初が勇馬の腕を抑えかかった。
私は確かにふざけていた。
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