第1章

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諸熊奈知 坊やをからかうのは私の性癖かもしれない。 私はキャメルの羽織物を選んでクスクス笑った。相変わらず大胆な見た目なのには変わりはない。 刺青師のファンが見たら泣くだろう。神父とあろう者がキャメルの羽織物で外を歩くのは、一貫して奇妙である。 変装室は刺青師の古びた本のような香りが漂う。 本当のところ、姫花など男の玩具で良い気味であった。過去の自分と比較すると姫花の弱さの余り吐き気がする。まず生きるという目付きが違うのだ。その次に生きるためのスキルを磨いていない。あの娘は誰かに頼って常に生きている。夏海凪を今でも心のどこかで頼りにしているのが見え見えだった。 甘い。 チョコレートの味だ。 白峰仁はチュパチップスの工場で働いているということはチョコレート味を常に携帯できる良いチャンスなのではないか。 だが、あの男。油断すれば私を堕とすため刺青師を殺そうとするだろう。私の観察力を侮られては困る。 教会のステンレスグラスに光が当たる。 眩しくて目を細めた。 〝人獣〟。 それとあの大火事に遭った館。 愛したり憎んだりすることを禁じられた男と足と声帯の不自由な女。 工場で働く懺悔師の殺人鬼。 これは何かのパーティーかしら?
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