第1章

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私は電気スタンガンの電圧を確かめた。僅かに痛みがミミズのようにのたうちまわるがまだまだ軽い。これなら、殺傷力は備えてないだろう。 今夜は一層の事、ブラを晒したまま、宝石店を襲おうかしら? 熊のマスクを被れば、私は〈怪盗スマルチェスタント〉と呼ばれる存在になれる。 社会的に嫌われ者でも好きな人は好きなコアなキャライメージだ。報道陣も巨乳の怪盗として取り上げ、芸能人並みに騒ぎ立てる。 私は勿論、自惚れている。もはや、金が欲しくて盗人をやるのではなく、スリルが欲しくて盗人やる状態だ。報道陣やマスコミのリアクションが私には生き甲斐だった。 白峰仁にマスコミが行くのならば彼をライバル視してもいい。そうね、料理に毒を仕込むのも有りかも。その場合、ビーフシチューはお決まりじゃない?仁は私になら殺されても本望だろう。 さておき、私は〝人獣〟という存在を信じていなかった。刺青師の妄想だとしておそらく、刺青師剣の父・楽我のいない世界を受け止められなかった剣の幻覚だろう。 ガキ神父がどれだけ大の大人達に馬鹿にされているか考えると憐れみに似たものさえ感じる。 この街で有名な〈オールグレー〉という居酒屋で男達がポーカーしながら、せせら笑っていた。 「ファビョってるから信じたらこっちが毒されるぜ」
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