第1章

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「いい気になってんじゃねえよ!お前みたいな男、誰が本気にするかっての。お前とかホモじゃねえか。今日ヤるか?ああ?」 僕は眼の下の隈をなぞりつつ、ボンヤリとした言葉を吐いた。 「僕はノン気だよ、羽咲」 羽咲がドスを利かした。 「羽咲さんだ!羽咲さん。言ってみろ」 「羽咲さん」 羽咲はキョトンとして、楽しそうに笑い出した。 「仁君、度胸あるな。俺の家来いよ。大樹(タイキ)と夜雨血(ヤウチ)も興味あるよな?こいつの顔、無性に殴りたくないか?」 大樹が引き気味に手で壁を作る。 「俺、男ダメなんだ…」 夜雨血も人なら誰しもが認めるDQN名で冷たくなり過ぎた人のように冷徹感を醸し出した。 「男を掘るのは刑務所だけだぞ?羽咲」 羽咲は恥をかいたのは僕のせいだという顔をして、僕に殺意を向けた。 僕は掠れ声で縋る。 「僕に求めてる物があるなら、手を貸すけど…」 羽咲は僕をしばらく睨んだ後、言った。 「15分間だけ自由に殴ったり蹴ったりさせてくれたら満足だ」 「そこまでして同性愛者を嫌うんだ」 僕はビックリした。同性愛者は優しいイメージが強く根付いていた。 「お前、もう喋るな」 僕はチェリー味を捨ててチョコレート味に取り掛かりつつ、ワクワクした調子で羽咲に声を掛けた。 「僕の家来ない?」
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