第1章

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太陽は西に傾き始め、黄昏色に染まる秋の晩、惨劇が起こる。 〝彼〟は最近、牧草を全く受け付けなかった。死んだ野良犬の肉を嬉々として、食していた。 私が〝彼〟に手を伸ばす。 「ゼン」 独善(ドクゼン)主義から取ってきた仮名、ゼンはグッタリと眠っているように見えた。 私はいつものようにゼンに触れようとする。 その時だった。 ゼンはいきなり血相を変え、私の手に噛み付いた。 「ゼン?どうしたの?痛い!離して!!」 私はゼンを見くびっていたのだ。肉食にしたのは紛れもなく私のはずだった。 ゼンと死闘の末、とうとう右の小指を付け根から噛み千切られた。 私は危機感と不安でそれからというもの、死神のタロットカードの夢を見るようになった。 カードが話し出す。 「お主がやりたいことはつまり…」 私の頭を両手に首から180度回転させる。死神は逆さになった。怒った顔が逆に泣き出しそうな顔になっている。 私は目をギョロつかせ、口元に笑みを浮かべた。 カードが泣き出して、なぜゼンが私の小指を食べなくてはならなかったのか考えた。 〝彼〟は私の中の願望の持ち主だったのではないか。私が一番望むことは、あの人を冒涜するもので間違いないのではないか。 逆さの死神は《死者蘇生》を意味した。
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