第2章

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夏海凪 「凪、立派な成績だよ」 親父が俺を抱き締める。普段有り得ないことだったから、俺はサーファー大会で金メダルを取ったこと以上に驚いた。 親父を抱き返す。親父のお気に入りのムスクの香りが漂って来て、酔いそうだった。 お袋が俺を呼んでいる。 「凪!」 俺は振り向き様にこれはマズイなと思った。 「お袋、来てたのか?」 「当たり前じゃない。息子の晴れ舞台、待ち遠しかったのよ。キスは?」 俺は目を泳がせながら、考えごとをしている振りをした。 「お袋、人がいるだろ…」 「いいのよ。こんな日ぐらい。凪、よく頑張ったわね」 俺は目頭が熱くなって来た。 「お袋…」 頬に軽くキスする。 お袋は満足気に俺から離れて行った。 「もう巣立ちの時期ね」 俺は笑っちまった。 「鳥じゃないんだからさ」 親父はお袋の肩に手をかけ、俺を暖かく見守っていた。 一瞬、嫌な予感が脳を駆け巡った。だが、その正体が掴めない。 「凪ー!」 突如、黄色い声が響く。 俺は声の主に深い愛情を感じたが、嫌な予感がして直ぐかき消した。 真っ赤なハイビスカスが似合う女の子が白いワンピースを着て、飛び跳ねている。 「姫花ー!!」 俺は金メダルを見せびらかしながら、ピースサインを送った。
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