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夏海凪
「凪、立派な成績だよ」
親父が俺を抱き締める。普段有り得ないことだったから、俺はサーファー大会で金メダルを取ったこと以上に驚いた。
親父を抱き返す。親父のお気に入りのムスクの香りが漂って来て、酔いそうだった。
お袋が俺を呼んでいる。
「凪!」
俺は振り向き様にこれはマズイなと思った。
「お袋、来てたのか?」
「当たり前じゃない。息子の晴れ舞台、待ち遠しかったのよ。キスは?」
俺は目を泳がせながら、考えごとをしている振りをした。
「お袋、人がいるだろ…」
「いいのよ。こんな日ぐらい。凪、よく頑張ったわね」
俺は目頭が熱くなって来た。
「お袋…」
頬に軽くキスする。
お袋は満足気に俺から離れて行った。
「もう巣立ちの時期ね」
俺は笑っちまった。
「鳥じゃないんだからさ」
親父はお袋の肩に手をかけ、俺を暖かく見守っていた。
一瞬、嫌な予感が脳を駆け巡った。だが、その正体が掴めない。
「凪ー!」
突如、黄色い声が響く。
俺は声の主に深い愛情を感じたが、嫌な予感がして直ぐかき消した。
真っ赤なハイビスカスが似合う女の子が白いワンピースを着て、飛び跳ねている。
「姫花ー!!」
俺は金メダルを見せびらかしながら、ピースサインを送った。
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