第2章

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親父もお袋も翌日、死んだ。 二人共、心臓を内部から食い破られていた。医学的に無理があった。 俺は刺青師剣の言葉を思い出す。 『人を愛したり憎んだりしてはいけません』 親父とお袋の葬式の中、俺は目を見開いて、何があったのか考えようとした。 何者かの呪い?そんなもの実在するのか? 涙を流そうとして笑い声が込み上げてきた。発狂染みた笑い声は伝染して、親父やお袋を知る親戚や友人達が泣き笑いし始める。葬式の場がそんなのだったから、この街で唯一、聖職に就く刺青師剣は気の毒そうに呟いた。 「これも定めか…安らかに眠れ」 親父やお袋の遺体の目が瞬きしているように見えた。不思議と怖くはない。 俺はタバコを吸うついでに少し夜道を散歩することにした。 雨が降り出す。 姫花が俺の後を追って来ていた。 「凪、大丈夫?」 俺は刺青師の言葉をまた思い出す。 『人を愛したり憎んだりしてはいけません』 「邪魔なんだよ(死なないでくれ)」 「え?」 「お前はいいよな?身寄りがいて(嫌ってくれ)」 「凪…ごめんなさい…」 「ムカつくんだよ!!!腫れ物を触るような態度は!(ムカつくんだよ!!!腫れ物を触るような態度は!)」 姫花の涙は雨に混じり、走り出そうとして無様に転けた。
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