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華園姫花
あの男はあの日を境に最低なことばかり私にする。そもそもこうなるなら、出会わなければ良かったのかもしれない。
夏海凪(ナツミナギ)。
肩まで伸ばした颯爽とした金髪とサーフィンに夢中な姿に憧れを抱いていた。真夏の太陽の下で男友達と笑いながら私に振り向いた凪と私は一瞬、時が止まったように見つめ合った。日本人にしては茶色過ぎる瞳の中に小柄でハイビスカスの花を髪飾りにした髪の長い女の子が映る。
風が荒々しく吹き荒れ、凪は飛んで行きそうなハイビスカスを空中でキャッチした。
「凪のヤツ、可愛子ちゃんに目付けてやがんの」
男友達の囃し立てを無視して、初めての出会いで凪は私の顎をクイっと軽く上げた。
「君、名前は?」
私はどもりそうになりながら、拙く話す。
余りにもの急な出来事で心臓が破裂しそうになり、息が出来ない。
「は、華園姫花(ハナゾノヒメカ)。20歳です」
歳まで言わなければ良かった。そう後悔した矢先だった。
「俺、23歳。夏海凪。よろしくな!姫花」
違和感なく会話してくれている。
それが私にはたまらなく嬉しかった。
「また会えますか?夏海さん」
「凪でいいよ。俺なんかこの海、酒嬢海教会の掃除人で夏の間はサーファーだからさ、ここ来ればいつでも会えるぜ」
凪は優しく私の髪にハイビスカスを絡ませた。
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