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「よお、姫花。今日もあそこはびしょ濡れか?」
凪がシアターまで迎えに来る。
凪は教会の孤児院の教師として、酒嬢教会で住み込みでバイトしながら、たまに海に出ては、サーフィンを楽しんでいた。
シアターまで来る時は最悪だ。
要求不満を私にぶつけるためであることが多い。
案の定、弱1時間、身体を弄ばれた後、教会の裏庭の崖っ淵まで連れて行かれた。
凪は車椅子を押しながら、シスター達に挨拶する。人が違うように爽やかな笑みを浮かべていた。
刺青師剣が棘を持った目で凪を見る。
「解放は考えられないのですね」
凪は薄ら笑いで答えた。
「玩具は玩具ですよ。好きに遊んで何が悪い?若神父様」
「貴方は狼ではなく羊に過ぎない。ずっと彷徨うのですか?」
私は紙に小さく書き込む。
《以前お聞きしたバーチュの呪いとは解けるものなのですか?》
若神父様がやんわり諭した。
「呪いは身近の存在であればある程、強力なものになります。呪い主が見覚えのない方である可能性はゼロに近いでしょう」
凪が肩を怒らせる。
「あの白峰仁ってヤツが怪しいな。如何にも人間を甘く見ていそうだ」
若神父様は微笑む。ゾッとする程歪んだ笑みだった。
「彼には彼の世界があります。それでいいのです」
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