第2章

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諸熊奈知 本当にやってのけたわ。流石、私。 今回はレイプされて、怯えている女を演じきった。警察の保護が逆に内部からの侵入を許すことになるなんて、誰も気付かなかったのかしら? サンドローズを手中で弄びながら、刺青師のあどけない顔を思い出す。 可愛い人。それが毒気になって、色っぽい。近付けば近付く程、愛おしさは意地悪に取って代わる。 今日は何を強要しようかしら? チュパチップスを舐めながら、私はこの街全体を見下ろせる街路に佇む。もう直ぐ夜明けだ。 〝バーチュ〟が本当にいたら、おそらく私の命はないだろう。逆に〝バーチュ〟が本当はいなければ刺青師は狂っている。 まあ、宗教家達に有りがちな狂気だから、生活の面で苦労はしない。刺青師の場合、狂気を散乱させる迷惑人間にはなり得ない。だからこそ、好きなのであって、もし、神を創造するのを信者に強要するような男だったら、いくら可愛い顔をしていても相手にしたくもなかった。 『神の創造』ーーそれが刺青師剣の人生テーマだ。神が人間を創り出したのではなく、最初から人間が神を創り出したのである。故にどんな人間も神を創り出せる以上、神以上の存在になる。それを宇宙(コスモ)と呼ばず何と呼ぶ?
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