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「木戸さん! パン買ってきましたー!」
屋上に続く階段に座り、一人弁当を食べる俺に呼びかける男。
タタタっと駆けて近づいて来たソイツは俺にパンを差し出すと、飼い主に褒めてもらいたくて仕方のない犬みたいな顔をした。
「サンキュ、スネオ」
「ツネオっす!」
スネオはビシッと敬礼した。
正直言うとすでに腹はそこそこ一杯になっていたけど、スネオの期待顔を見たらなんとなく断れなかった。
俺がパンを齧っていると、今度は反対方向からもう一人の男が現れた。
「木戸さん! この前、森高の頭とやり合ったって聞いたんすけど、ほんとっすか?! なーんで俺を呼んでくれないんですかー!」
「モジャ公」
「公助っす!」
モジャ公はそう言いながらも有り余る体力を発散するかの様に、その場で見えない敵を相手にパンチを繰り出している。
先に断っておくと、俺は下っ端にパンのパシリを頼んだわけでも、他校を相手に殴り込みをかけたわけでもなんでもない。
ーー
中学に入学すると、図体のデカさと物怖じしない態度のデカさから、上級生に生意気と絡まれる事が多くあった。
自分からケンカをふっかけたことなんて無い。
身に降る火の粉を払っただけ。
ただ、俺は一度も負けなかった。
周りには不良と呼ばる奴らが俺を慕い集まってくる。
ガタイが良かった。
ケンカもたまたま強かった。
その上強面だった。
たった、それだけ。
俺は自分でも知らぬ間に地元の不良のリーダーになっていた。
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