ココアにとろける涙味

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永瀬にはいつも軽くあしらわれてきた。子供は相手にしないと最初から言われていたし、おっさんに構って時間を無駄にするなとも言われた。 けれど、年齢を理由にされたり、美羽のためだと決め付けられたりして宥められるのは、納得できなかった。 永瀬が迷惑だから、止めてくれというのなら分かる。 けれど、優しい永瀬は決してそうは言わないのだ。 自分で押し倒しておきながら泣きじゃくる美羽を、呆れながらも突き放さないのは、大人の余裕なのだろうか。諦めきれずに燻っている美羽に八つ当たりされながらも、ココアを淹れてくれる永瀬の優しい残酷さが分からなかった。 結局、美羽は何もできなかった。目の前にいたのに、手を伸ばせば届くところにいてくれたのに、キスもハグもできなかった。 所詮、その程度の勇気しかないのだ。だから、永瀬も軽くあしらえるのだろう。 威勢が良いのは永瀬が振り向いてくれるまでで、滅多にこちらを向いてくれない顔が間近にあると思うだけで、パニックになってしまう。そんな自分が永瀬と付き合うなんて、土台無理な話なのかもしれない。
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