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なんで永瀬がこんなに好きなのに、珈琲が飲めないんだろう。
なんで永瀬とこんなに歳が離れているのだろう。
なんで永瀬は美羽のことを好きになってくれないのだろう。
なんで永瀬のことを好きになっちゃったんだろう。
なんで……諦められないのだろう。
「なんでって……こんなおっさんに構わなくたって」
お決まりの拒絶を、美羽は珈琲カップごと床に叩き付けた。粘度の高いココアが重たそうに幾らか飛び散ったが、構いやしない。
「だって、しょうがないじゃん! 好きになっちゃったんだから。どうして好きになったか分かんないのに嫌いになる方法なんて分かんないよっ!」
永瀬があからさまに溜息をついた。美羽の肩が大きく揺れたが、動じていないふりをした。
「お前、何が嫌い?」
「煙草」
次に降ってきたのは、舌打ちだった。
店外に一度出た永瀬は、煙草の香りを纏わせている。一服してきたのだろう。
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