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「おっさんの前でそんな風に泣くな」
「なんで!? 子供なら泣いたっていいじゃない!」
ヒステリックに泣き喚く美羽に、永瀬が口を歪めた。
「……子供に見えなくなんの、そんな顔されると」
ぽかんと一瞬静かになった美羽の額を、人差し指で揺らす。振り子のように戻って来た美羽がその意味を把握できない内に、そっと触れるだけのキスをした。
「泣き止め」
パタッ……パタパタと大粒の涙が零れ落ちる。その雫を掬うように太い指が頬を撫でた。
「だって……苦ぃ……」
「もうしねぇから」
「やだ。して」
眉を顰めながらも唇を近づけた永瀬は、その直前で一度離れた。
すっかり冷えたココアを口に含んだ永瀬からの三度目のキスは、苦くて甘い大人の味がした。
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