ココアにとろける涙味

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一方で、永瀬が疑いたくなるのも、よく分かっている。この体勢に陥る前、キスさせてと永瀬に迫ったのは、美羽自身だからだ。 常日頃から、永瀬を困らせているという自覚もある。高校に入学した途端、押し掛けるようにして美羽がこの店でバイトをし始めたのは、永瀬のことが好きだったからだ。働き始めて半年以上、好意を隠す気は無かったから、永瀬に気持ちはバレバレだ。 もちろん、迷惑を掛けるのは不本意だから、仕事はちゃんとしている。夏休みには毎日開店から閉店まで働いていたお陰で、大抵のことは一人でもできるようになった。 元々高校生を雇うことを渋っていた永瀬に余計な心配をさせたくなかったから、勉強だってしっかりやっていたし、学校でのあれこれを話して、ちゃんと学校生活も楽しんでいることをアピールしたりした。 その学校では、クラスメイトからモテテクニックをアドバイスしてもらって、いちいち試してみたりもした。 中学生のときには全くしなかったメイクもするようになった。大人の男向けに、濃すぎず、あくまでナチュラルかつ庇護欲を誘う可愛らしい路線が良いらしいとのアドバイスを受け、メイク上手のクラスメイトの指導の元、熱心に研究した。美羽の顔立ちや体型を考えて、最も手本になりそうなアイドル歌手を割り出してもらい、何度も練習したのだ。そのアイドルのメイクテクを分析したネット記事は、永久保存版だ。
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